寒くない間取りと断熱性能|家の性能と体感温度は必ずしも一致しない!?

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今回は断熱仕様を選べないトヨタホームでも、間取りの工夫で冬の寒さを軽減できないか考えてみた記事です。

先日、正月休みに実家に帰省してリビングでくつろいでいたとき、子供たちが家の中で鬼ごっこを初めてリビングの扉を開けっぱなしで走り回るので廊下の方から冷たい空気が入ってくることに気付きました。

リビングの扉の先が玄関や二階への階段とつながっていると、その扉を開けると冷たい空気が入ってくることは、みなさんも経験したことがあると思います。
でもリビングの扉って、そんなに断熱性能が良いとは思えません。トヨタホームだと外壁は高性能グラスウール16Kが100mm、窓はペアガラスでアルミ樹脂複合サッシと、いちよう断熱に配慮した仕様となっていますが、屋内扉の断熱性能は聞いたことがありません。何なら下の方は隙間があいているくらいなのに、この扉のおかげで寒さを軽減できているとすると、断熱性能と体感的な寒さは別物なんじゃないかと思い、ちょっとした実験をして調べてみたので紹介させて頂きます。

後半は僕なりに考えたトヨタホームでもできる寒くない間取りについて紹介させて頂くので、これから家づくりをされる方に参考にして頂ければと思います。

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収納による断熱性能

冒頭で玄関からくる冷たい空気の話をしましたが、我が家はスマートエアーズ(全館空調)を採用しているので、玄関も廊下もリビングも同じ温度になり、そもそもリビングの扉を開けっぱなしにしておいても寒くないので、全館空調の暖房が効かない収納の中と外の温度差から室内扉(収納の扉)がどれだけ熱エネルギーの損失を抑えているか調べてみたいと思います。

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実験は、和室の吊り戸収納で実施しました。我が家の和室はLDKと壁や扉で遮られておらず同じ空間なので室内の温度はリビングと同じになります。冬の時期は収納内の空気が冷たく感じるので、冒頭で紹介したリビングと玄関のような関係になっていると思われます。

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和室の間取りと吊り戸収納のサイズはこのようになっています。収納の下に高さ600mmの空間があるので、収納高さは2,000mmになります。上の図でグレーにハッチングした部分は外壁になるので、もし収納の扉や収納内の空間に断熱性があるとすると、外壁の断熱仕様が選べないトヨタホームでも間取りの工夫で断熱性能を向上できることになります。

余談ですが上の図は「RootProCAD」というフリーソフトを使って自分で書きました。フリーソフトなのに有償のCADソフトよりも使いやすいくらいなので、CADが使える方ならお家の間取りを検討する際、家具や家電の配置を正確な寸法で検討できるのでおすすめです。

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実験はまず収納の中と外で壁の温度と雰囲気の温度を測定し、それぞれの壁から逃げている熱エネルギーを調べます。次に収納内の雰囲気の温度低下から収納内の空間から損失した熱エネルギーを算出し、壁から逃げた熱エネルギーと空間から損失したエネルギーを比較します。不足する分のエネルギーは収納の外(和室)から入ってきたエネルギーと考えることができるので、この収納の外から入ってきた熱エネルギーが小さければ収納に断熱性能があることになります。

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先ほどの話を絵にすると、こんな感じです。

それでは収納の中と外で温度を測定してみたいと思います。

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測定はいつもの通り、RaspberryPiを使って測温します。

RaspberryPiを使った室内温度環境の測定について別の記事で詳しく紹介しているので、測定方法が気になる方はこちらの記事も読んでみて下さい。

早速、測温結果を紹介したいと思います。

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1つ目のグラフは実際の測温結果、2つ目のグラフは収納の内と外で壁と雰囲気の温度差を計算してグラフ化した結果です。2つ目のグラフを見ると収納の内と外で壁と雰囲気の温度差は、ほとんど同じで平均で-0.6℃でした。収納の内と外といっても同じ壁なので逃げる熱エネルギーの量が同じなのは正しい結果だと考えられます。

この測温結果から収納内の外壁から逃げる熱エネルギーを計算します。
5(自然対流空気の熱伝達率)×-0.6℃(温度差)×5.44m²(収納内の外壁面積)=16.75W
今回は収納内から損失した熱エネルギーと比較する為に測温を実施した0時~5時の5時間で収納内の外壁から損失するエネルギーに変換します。
A=16.75W×60秒×60分×5時間=301.53kJ

次に収納内の空間から損失した熱エネルギーを計算します。

収納内の雰囲気温度は、測温を開始した0時が16.186℃、朝5時の時点では13.874℃に低下しているので、5時間の間に2.312℃分の熱エネルギーが損失したことになります。
この損失したエネルギーを下の式で求めます

B=1.006J/gK(乾燥空気の比熱)×2.955m³(収納内の体積)×1293g/m³(空気の密度)×2.312℃(温度差)=8.89kJ

少し残念な結果ですが、この結果から収納には断熱性能が全く無いことがわかりました。
外壁から損失するエネルギー301.53kJに対して、収納内の空間から損失したエネルギーは8.89kJと約3%しかないので、97%は収納の扉を通り抜けて和室から熱エネルギーが損失していることになります。

収納の断熱性能を少し期待をしたのですが、測温の結果からは断熱性が無いことがわかりました。窓ガラスや玄関の扉と違って収納の扉は目で見て分かる隙間が1mmくらい空いているので、我が家の吊り戸収納のC値を計算すると27くらいになりますし、扉は木製と言ってもグラスウールと比較すると約4倍熱伝導率が高く厚みも半分以下なので、収納や室内扉には断熱性が期待できないようです。

断熱性能の体感温度は別もの!?

先ほどの実験結果は収納でしたが、リビングと廊下の扉でも大きな違いはないと考えられます。じゃあ何で断熱性能が低い扉のおかげで寒さを軽減できるのでしょうか?

先ほど紹介した我が家の収納の扉も断熱性能は無いはずなのに扉を開けると収納の中から冷たい空気が流れてくるのを感じます。測温結果から収納の内と外の温度を確認してみると、暖房が効いてない0時~5時の間は1℃程度しか温度差がありませんが、暖房が効き始める5時以降は4℃まで温度差が広がっています。恐らくこの温度差が体感的に寒く感じる原因ではないかと思います。

例えばリビングの室温25℃の状態で廊下が21℃だった場合、21℃の温度自体は寒いと感じるほどの室温ではないですが、25℃のリビングから21℃の廊下に出れば寒いと感じると思います。

収納の扉やリビングの扉は断熱性が低く多少隙間があいていても、扉があることで空気の流れが遮られて温度変化を遅らせることができます。この為、朝や夜にリビングの暖房を入れて室内の温度が上昇している時は廊下との温度差ができて寒さを感じます。但し収納やリビングの扉は断熱性能が低いので時間が経てばリビングの温度に近づき、昼間にはリビングと廊下の温度差が小さくなるので廊下が寒く感じにくくなるのだと思います。

リビングの扉は実はない方が良い!?

先ほどの実験結果から寒さを感じにくい間取りにする為には、どうしたらよいか僕の考えた間取りを紹介します。

実際に自分の家で実践したわけではないのと、一般的に聞く考え方と違っている部分があるので本当にうまくいくかは分かりませんが、1つの考えとして参考にして頂ければと思います。

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ざっくりとした図ですが、一般的なリビングと玄関の関係の間取りです。
「断熱性能の良い仕様の玄関扉でも熱貫流率は約2W/m²・Kとペアガラスよりも悪く玄関は寒くなりやすいので、玄関の寒さがリビングに伝わらないように玄関ホールとリビングは扉で分離しましょう」ほとんどの方が自分の実体験から玄関が寒いことが分かっているので、このように説明頂くと納得すると思います。

ただ先ほどの実験から玄関ホールとリビングを分離している室内扉には断熱性能があまりないので、室内扉を設置してもリビングから熱が逃げることは抑制できていません。むしろ扉があることでリビングと玄関ホールの間に温度差を作って玄関を寒く感じさせる要因になっていると思います。

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なので、ここは思い切ってリビングと玄関ホールの間の扉を開放して、リビングと玄関が同じ温度になるようにすると良いのではと考えました。但しリビング側にエアコン(暖房機器)があると、暖房に近い側が暖かく遠い側が寒くなるので、玄関ホールにもエアコンを設置して両側から暖めることで室内の温度差が出にくいようにすると良いと思います。

わざわざ寒い玄関を暖房するのは、もったいないのでは?と思われるかもしれませんが、先ほどの実験結果では室内扉による熱損失の低減効果は3%程度だったので、毎月の暖房費が10,000円だった場合、玄関ホールの暖房を追加しても光熱費は増加は300円程度なので、この程度の光熱費の増加で済むのであれば玄関も暖かい方が快適で良いのではと考えました。今回、玄関ホールに特化して書いていますが、他にも洗面所や浴室なども扉を開放して、リビングと同じ温度になるようにすると快適で過ごしやすい空間になると思います。

間取りによっては、リビングの暖房が届きにくい場合もあると思いますが、その場合は、先ほどのように玄関ホールや廊下、洗面所などにもエアコンを設置してみるのも良いと思います。何となく1台のエアコンで暖房するのと2台のエアコンで暖房するのでは、2台使用する方が電気代がかかるように思いますが、家から逃る熱エネルギーは同じなので、どちらでも電気代は同じになるはずです。むしろエアコンは負荷が高いと効率が低下するのと、大容量のエアコンほど効率が悪いので、初期投資が許容できるのであれば、大型のエアコン1台にするより、中型のエアコン2台、小型のエアコン3台にした方が電気代は節約できると思います。但し全てのエアコンを常に作動させることが前提です。廊下にエアコンを設置したけど、やっぱりもったいないから使っていないだと、リビングのエアコンに負荷が集中してしまって効率が下がり電気代が増える可能性がるので注意して下さい。

まとめ

今回は、間取りで家の中の寒さを軽減する方法を紹介しました。

家の中で寒くなりがちな玄関や洗面所などに扉を設けてリビングに冷たい空気が伝わってこないようにするのは体感的な寒さを防ぐのに効果的ですが、室内扉は断熱性能が低いので残念ながら熱の損失を抑えるという観点では効果が無いと思います。

どうせ熱の損失が変わらず電気代への影響が小さいのであれば、寒くなりがりが玄関や洗面所を積極的に暖房して家中どこでも温度差がないお家にするのも快適に過ごす1つのアイデアだと思います。

実際に我が家はスマートエアーズ(全館空調)を採用しているので収納の中以外は、玄関や廊下、洗面所も暖房が効いていてとても快適です。全館空調を採用しないにしてもエアコンをうまく配置して家中暖かく快適に過ごせる空間を作れるように考えてみて下さい。

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