第3種換気の負圧は体調に影響ない?家の中がどれくらい負圧になるか測定してみた

Negative-pressureRaspberry Pi
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今回は久しぶりにRaspberryPiを使ったお家環境測定ネタになります。

以前、換気システムの紹介記事で第3種換気システムは排気を機械式の換気扇でおこない建物内を負圧にして各居室の給気口から空気を取り込むと紹介しました。

「雨の日など低気圧が近づくと頭痛が起きる」や「気圧の低い山の上では高山病にかかりやすい」など気圧が低いことで体調が崩れるという話を聞いたことがあると思いますが、第3種換気で家の中の気圧が下がることは人間の体調に影響しないのか?そもそも換気設備によってどれくらい気圧が下がっているのか気になったので、RaspberryPiを使って気圧測定器を作成し建物内の気圧を測定してみたので紹介させて頂きます。

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RaspberryPiを使った気圧測定

室内の気圧を測定した結果を紹介する前に、いつものようにRaspberryPiを使ってどうやって気圧測定をしているのか紹介したいと思います。「ラズパイには興味ないです。気圧測定の結果を早く教えてく下さい」という方は、この項目は飛ばして次の項目から読み進めて下さい。

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今回、気圧測定に使用したセンサは、Infineon製の『DPS310』というセンサになります。センサ自体は上の写真に矢印で示した黒色の四角い部品になります。この部品のサイズは、2.0mm×2.5mm×1.0mmと非常に小さく、更に電極が部品の下面にあるので、個人的な電子工作で扱うのは難しいのですが、上の写真のように評価基板に実装された状態で売られているモノがあるので、これを使ってRaspberryPiと接続していきます。値段は評価基板の状態で1,000円くらいで購入できます。今回はマルツオンラインストアで購入しました。

DPS310(気圧センサ)の概要

動作範囲300~1200hPa
温度範囲-40~85℃
相対精度±0.06hPa(±0.5m)
絶対精度±1hPa
インターフェースI2C, SPI

このセンサはスマートウォッチなどに内蔵され、気圧や標高の情報を検出したり、ドローンに内蔵され飛行高度を検出するのに使用されています。非常に精度が高く特に相対精度だと50cm、高さが変化したことによる気圧の違いを検出できる精度があるようです。また300hPaまで計測可能とのことなので、エベレスト(8,848m)の頂上くらいまで測定できることになります。

これまで紹介したラズパイ記事では、Made in chinaの聞いたことのないメーカのセンサが多かったですが、今回は本業の方でもよく使用するInfinneon製ということで性能の方は期待できそうです。

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今回は、RaspberryPiとセンサの接続に、I2C通信を使うので、評価用基板のSCLとSDA、電源の3.3VとGNDにピンをはんだ付けします。電子工作の作業はこれくらいで、あとはRaspberryPiのGPIOピンと4本の線で接続すれば準備完了です。

I2C通信はRaspberryPiが標準でサポートしているので、コンフィグでI2C通信をONに設定すれば使用することができます。通信の内容はデータシートを見ながら初期設定、データ取得などプログラムを作り込んでいく必要がありますが、ありがたいことに同じセンサを使ってRaspberryPiで動作させる方法を紹介しているブログがあり、Pythonのプログラムもそのブログの内容を参考に作成させて頂いたところ1発で動作させることができました。

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また今回は浴室などコンセントのない部屋でも気圧測定をしたいので、RaspberryPiはモバイルバッテリで駆動し、RaspberryPiと気圧センサを持って家の中を移動しながら測定を実施しています。

先ほどDPS310(気圧センサ)の紹介で、50cmの高さ違いを検出できる精度があると紹介しましたが、ホントにそこまで見分けられるのか、動作確認を兼ねてお家の1階と2階で気圧差を測定してみたので紹介します。

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この測定結果は2階の書斎で気圧測定をスタートし、書斎→階段ホール→階段を降りて1階→30秒休憩→階段を上り階段ホール→30秒休憩→書斎に戻ってきて測定を終了しています。

この結果を見ると1階に降りていくと徐々に気圧が上昇し、再び2階に登ると気圧が低下していて、正しく気圧を測定できていそうです。また、どこまで正確に測定できているか1階と2階の気圧差から高さを計算してみたところ、(100673Pa-100637Pa)÷12Pa=3mと、実際の高さ3.08mにかなり近い結果だったので、精度良く検出できてることが分かります

気圧測定結果

測定結果を紹介する前に、前提となる我が家の換気システムや空調設備の配置について簡単に紹介しておきます。

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こちらは1階換気設備の概要になります。ピュア24セントラル(トヨタホーム第1種換気)による換気がメインで、浴室とトイレの換気扇も24時間稼働し補助的な換気をしています。ピュア24セントラルだけであれば、第1種換気なので建物内が負圧になることはないと思いますが、浴室とトイレの換気扇も24時間稼働しているので、給気量より排気量の方が多くなり、第3種換気と同様に建物内が負圧になっている可能性が高いと考えられます。

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そしてこちらが2階換気設備の概要になります。2階も1階と同様に基本はピュア24セントラルによる換気がメインで、トイレの換気扇を24時間稼働しているので、こちらも負圧になっている可能性が高いと考えられます。

それでは、この換気設備の概要を踏まえた上で測定結果を紹介していきます。最初に生データを紹介させて頂き、後ほど各部屋の気圧をまとめた結果と考察を紹介させて頂きます。

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まずこちらは1階の気圧測定結果になります。リビングで測定を開始→玄関ホール→1階トイレ→玄関ホール→洗面室→浴室→浴室窓開放と移動しながら測定した結果です。最後の窓開放後は屋外の気圧となる為、この気圧を基準に建物内がどれだけ負圧になっているか確認します。

詳細な気圧データは後ほどまとめの項目で紹介しますが、この測定結果から洗面室は屋外の気圧と差がなく、リビングと玄関ホール、トイレ、浴室は屋外と比較して負圧になっていることが分かります。また部屋を移動するタイミングで大きく気圧が変化していますが、これは扉を開けた事による気圧の変化だと考えられます。リビング→玄関ホール、玄関ホール→トイレの移動は測定器側に引いて開ける扉の為、測定している側の部屋の気圧が上がり測定結果が上昇しています。逆にトイレ→玄関ホールの移動は押して開ける扉の為、測定している側の部屋の気圧が下がり測定結果が下降しています。玄関ホール→洗面室、洗面室→浴室の移動は引き戸の為、部屋の圧力変動がなく測定結果の上昇や下降もありません。ここまでリアルに測定できると思っていなかったので正直驚きました。

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次ぎにこちらが2階の気圧測定結果になります。2階トイレで測定を開始→2階階段ホール→書斎→書斎窓開放という流れで測定を実施しています。こちらも最後の窓開放後の値が基準の気圧になります。この結果からトイレと階段ホールは屋外と比較して負圧、書斎は屋外と差がないことが分かります。

測定場所外気に対する相対気圧
リビング-3.59Pa
玄関ホール-2.23Pa
1階トイレ-4.62Pa
洗面所-0.77Pa
浴室-13.11Pa
2階トイレ-5.44Pa
階段ホール-3.59Pa
書斎-0.18Pa

そしてこちらが、各部屋の気圧データをまとめた結果になります。「気圧測定方法」の項目で紹介したように、そもそも1階と2階で気圧が異なってしまうので、わかりやすいように絶対値ではなく屋外の気圧に対する相対値で表現しています。

この結果からどの測定箇所でも屋外の気圧に対して負圧になっていることが分かります。また個別に換気扇を稼働しているトイレと浴室は予想通り他の部屋と比べて低い気圧となっていました。特に浴室は他の部屋と比較して低い気圧となっていますが、これはユニットバスの気密性が高く給気量が絞られていることが要因と考えられます。

リビングと階段ホールが洗面所や書斎と比較して気圧が低くなっているのは、換気設備の影響ではなくスマートエアーズ(トヨタホーム全館空調)の影響と考えられます。我が家のスマートエアーズはリビングに面した階段下収納と2階階段ホールに設置されているので、本体に向かって空気が引き込まれる、リビングと階段ホールは他の部屋に比べて気圧が低くなり、逆に書斎や洗面所はスマートエアーズの吹出口があるのでリビングや階段ホールに比べて気圧が高くなっていると考えられます。

またこの結果から換気設備によって建物内が負圧になることは事実ですが、気圧が最も下がっている浴室でも-13Paと標高に換算すると約1m分の気圧差しかなく、これによって体調が崩れるようなことはないと思われます。ちなみこの記事を書いている2021年05月25日の日本付近にある高気圧と低気圧の差が12hPa=1200Paと建物内外の気圧差より100倍も大きく、換気設備によって発生する負圧がスゴく微々たるものであることが分かります。

トヨタホームは鉄骨造ということもあり、あまり気密性が高くないといわれているので、もうすこし気密性の高いお家であれば、今回の測定結果よりも負圧の値が大きくなると思いますが、それでも体調が崩れるほどの気圧差は発生しないと思われます。

第3種換気の注意点

換気設備を取り扱っているメーカのホームページに「第3種換気システムは窓を開けるとまともに換気できなくなる」との記載を見かけることがありますが、今回の測定結果からも窓を開けると部屋の負圧が解放される結果となっており、建物内の圧力を下げて給気口から外気を吸い込む構成の第3種換気で窓を開けると換気できなくなることが分かります。

トヨタホームの第3種換気は、浴室とトイレの換気扇を24時間稼働させて家の中の空気を吸い出して換気する構成なので、特に浴室とトイレの窓を開けてしまうと他の部屋は全く換気されないことになってしまいます。このあたりはハウスメーカの方から注意喚起される内容なのかもしれませんが、ややもすると浴室とトイレの窓は開けっぱなしにする家もあると思うので注意が必要です。ちなみに僕の実家は24時間換気が義務化になる前に建てた家ですが、トイレと浴室の窓は常に空いていた記憶があります。

まとめ

今回は第3種換気によって家の中がどれくらい負圧になるか調べた内容を紹介してきました。

今回の測定結果では、建物内外の気圧差は最大で13Paとそれほど大きくない結果だったので、換気設備によって建物内が負圧になっても体調に影響するようなレベルではないと考えられます。但し10Paの気圧差でも片開きの玄関扉にかかる力に換算すると23N≒2.3kgと以外と力がかかっているので、換気システムを稼働していると玄関扉を開けるのが重く感じるような現象が発生します。

また記事内にも記載しましたが、第3種換気で窓を開けてしまうと部屋の負圧が解放されて計画通り換気ができなくなるので換気システムを活用して家の中の空気を入れ換えたい場合は窓の開けっぱなしには注意して下さい。

今回の内容以外にもトヨタホームの換気設備を紹介する記事やRaspberryPiを使ってお家の中の環境測定をしてみた記事なども書いているので、よかったらリンク先の記事も読んでみて下さい。

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