前回の記事でスマートエアーズ(トヨタホーム全館空調)の暖房は室内の空気が暖まるのに時間がかかるので、ガスファンヒーターと組み合わせて使うのが最強と紹介させて頂きました。まだその記事を読んでいない方はこちらのリンクからチェックしてみて下さい。
今回はそんなガスファンヒーターのメリット・デメリットの紹介と、ガスファンヒーターのデメリットの1つ、室内の空気の汚れがどの程度なのか調べるためにCO2濃度を測定してみたので結果の紹介をさせて頂きます。
更にRaspberryPiとSwitchBotを使って室内のCO2濃度をモニタしながら換気を自動的に切り替えるツールを作ってみたので、後ほど紹介させて頂きます。
ガスファンヒーターのメリット・デメリット
まずはガスファンヒーターのメリット・デメリットから紹介させて頂きます。
メリット
□立ち上がりが早く室内の暖まりも早い
ガスファンヒーターを使う1番のメリットは暖房性能の高さと即暖性です。
スイッチをONして5秒もかからずに暖かい風が出てきます。またガスを燃焼させて熱を発生させているので、他の暖房機器と比べて発生する熱量が圧倒的に多く広範囲を短い時間で暖めることができます。
このデータは以前の記事でも紹介したスマートエアーズ(全館空調)のみで暖房した場合とガスファンヒーターを併用して暖房した場合の室内の温度変化です。スマートエアーズのみで暖房した場合、室内の温度を5℃上昇させるのに5時間くらいかかるのに対してガスファンヒーターを併用すると半分以下の時間で同じ温度に上昇させることができます。
□暖房性能が外気温の影響を受けない
エアコンは室外機で屋外の熱を集めて室内を暖めるため外気温によって性能が左右されます。外気温があまりにも低いとエアコンの暖房性能も低下します。これに対してガスファンヒーターはガスを燃焼させて熱を発生させているので外気温は関係なく、外がどんなに寒くても安定した暖房性能を得ることができます。
□石油ファンヒーターのような給油の必要がない
これは本当に楽です。今のお家に住む前は石油ファンヒーターを使用していましたが、灯油タンクが空になったときに流れるメロディーは本当に嫌いでした。寒い中、屋外に出ての給油やガソリンスタンドで灯油を購入する作業が必要なく、いつでも,いつまででも使い続けることができます。
□ガスを燃焼する際に水蒸気が発生するので乾燥しにくい
都市ガスに含まれる主な成分のメタンを燃焼させるとCH₄+O₂ → CO₂ + H₂O このように二酸化炭素と水が発生する為、空気中の水蒸気量が増えて部屋の温度が上昇しても湿度が下がらず乾燥しにくいメリットがあります。逆に室内の水蒸気量が増えすぎると結露する可能性もあるので注意が必要です。
デメリット
□ガスコンセントが必要
ガスファンヒーターは給油の必要がありませんが、ガスコンセントとホースを繋いでガスを供給する必要があるので、ガスファンヒーターを使用したい場合は、お家を建てる時点でガスコンセントを準備しておく必要があります。また石油ファンヒーターのように移動して使うことも難しいので、風呂に入る前に浴室と脱衣所をスポット的に暖めるような使い方はできません。
ガスファンヒーターとガスコンセントは上の写真のようにガスホースで繋ぎます。長いホースも売られていますが、子供が引っかけたりする可能性があるので、できれば最短の長さになるようガスファンヒーターを設置する位置を考えてコンセントを準備すると良いと思います。
またスマートエアーズ(全館空調)と組み合わせて使用する場合は、最も暖めたいリビングなどに設置しておけば、スマートエアーズにより屋内の空気が循環されるので、各部屋と洗面室、廊下や玄関もガスファンヒーターの効果で早く暖かくなります。
□エアコンに比べて光熱費が高い
エアコンによる暖房と比較すると光熱費が高くなります。契約している電気やガスのプランによって多少ことなる場合もありますが、エアコンはヒートポンプ式と呼ばれるエネルギー効率の高い方法で暖房をしているので、同じ熱量を得るために消費するエネルギーが少なく、光熱費も安くなります。但しエアコンは冷えた室内の温度を上昇させる際に消費電力が大きくなるので、部屋の温度を暖めるのはガスファンヒーター、暖まった室温を維持するのにエアコンを使うのが最も効率的だと思います。
□室内の空気が汚れる
ガスファンヒーターはガスを燃やして熱を発生させているので、燃焼によりCO₂やNOxが発生し室内の空気が汚れるので定期的な換気が必要になります。説明書には「1時間に1~2回換気をしてください」と記載されています。ガス会社のホームページには石油に比べて天然ガスはCO₂やNOxの排出量が少なく環境に優しいクリーンな燃料と紹介されていますが、屋内のCO2濃度が上昇することは間違いないので十分な換気が必要になります。ちなみにエアコンはガスファンヒーターなどと比べて空気が汚れないと記載されていることが多いですが、エアコンもフィルターや本体をこまめに掃除しないとホコリやカビを室内に飛散させてアレルギーの原因になるので、その点は注意が必要です。エアコンメーカーは2週間に1度フィルタの掃除を推奨していますが、こんなに高い頻度で掃除するのは難しい気がします。
おすすめのガスファンヒーター
ガスファンヒーターは主にリンナイとノーリツの2社が生産しており、この2社から選ぶことになります。ガス会社のブランド名で販売されている機種もありますが、おそらくこの2社のOEM製品になります。
種類もそれほど多くなく、どちらのメーカーの製品を選んでも大きな違いはないですが、1つ違うところはリンナイのガスファンヒーターは時計機能があり時間指定で予約をして稼働させることができるので、朝起きる前に部屋を暖めておくような使い方ができます。ノーリツの方もタイマー予約機能はあるのですが、時間指定ではなく、何時間後に稼働というタイマーなのでセットするタイミングによって時間を変える必要があり少し面倒なので、タイマーを使いたい場合はリンナイの方がおすすめです。ちなみに我が家が使っているガスファンヒーターはこちらになります。
ガスファンヒーターによる空気の汚れ
先ほどガスファンヒーターのデメリットとして紹介させて頂いた空気の汚れについて、実際ガスファンヒーターを使うと室内の空気がどの程度変化するのかCO2濃度を測定して確認してみたので紹介させて頂きます。
まずはガスファンヒーターを使用していない場合のリビングのCO2濃度です。
この測定をした日は休日で、昼間に家族4人がリビングで過ごしている状態のCO2濃度です。また第1種換気設備の風量は弱(風量:56m³/h)に設定、浴室とトイレの換気扇は24時間稼働している状態になります。
昼間のCO2濃度は最大で800ppm、平均で600~700ppmと健康的な環境を保てています。
次に同じ換気条件で早朝にガスファンヒーターを使用した場合の結果を紹介します。
ガスファンヒーターを6:00から8:00の2時間使用した結果、室内のCO2濃度は最大で2,400ppmまで上昇しています。やはりガスファンヒーターはCO2をかなり排出しているようで第1種換気だけでは室内のCO2濃度は健康的に良くない数値になっています。
測定結果をよくみるとCO2濃度が低下し始めて1,900ppm程度のところで段のようになっています。恐らくこのタイミングがガスファンヒーターをOFFしたタイミングで、最高値の2,400ppmに到達したあと低下しているのは、室内の温度がガスファンヒーターの設定温度に到達して運転モードが強から弱に切り替わった為と思われます。このグラフから推測すると、このままガスファンヒーターで室内温度を維持した場合、室内のCO2濃度は1,500~1,600ppm程度で安定すると思われます。
最後は第1種換気設備の風量を強(風量:97m³/h)に設定してガスファンヒーターを使用した場合の測定結果を紹介します。
ガスファンヒーターを使用している時間は、先ほどと同じですが室内のCO2濃度は最大でも1,900ppm程度に抑えられています。やはり換気量を増やすと室内のCO2濃度を低減できるようです。またガスファンヒーターをOFFしたあとのCO2濃度の低下速度が換気設備の風量を弱にしている場合よりも早く、午前中には外気と同等の400ppmまで低下しています。
この結果について良いか悪いかは判断できませんが、やはりガスファンヒーターを使うと室内のCO2濃度が上昇するのでしっかりと換気することはとても重要です。ちなみにキッチンでガスコンロを使用した場合も同様に室内のCO2濃度が上昇するので必ず換気扇をつけるようにして下さい。
ラズパイとSwitchBotで換気を自動化
先ほどの結果からガスファンヒーターを使う時は第1種換気設備の風量を強にして室内のCO2濃度上昇を抑えたいのですが、冬の時期に換気設備の風量を強にしておくと、お家の熱が多く逃げてしまい暖房費が増えるので、ガスファンヒーターを使う時だけ風量を強にする換気風量自動切替システムをRaspberryPiを使って作ってみたいと思います。
今までは温度やCO2濃度の測定といった計測器の代わりとしてRaspberryPiを使ってきましたが、今回は換気扇の風量を切り替えるという出力側の動作が入ってくるので、今までよりIoT的で、よりラズパイっぽい使い方になります。
今回作成したのは、以前紹介したCO2測定用のセンサ(MH-Z14A)で室内のCO2濃度を測定し、濃度が1,000ppmを超えると、SwitchBotのスイッチにON/OFF指令を出して第1種換気の風量切替スイッチを強に切り替え、また1,000ppmを下回ったときにも同様にON/OFF指令を出して風量を弱に切り替えるといったシステムです。
まず簡単にSwitchBotの紹介をしたいと思います。
今回、換気扇の風量切替スイッチを遠隔で操作する為に使用したのがSwitchBotとよばれる商品で、深圳に本社がある中国企業が開発したお家の中のスイッチを遠隔操作できるようにするIoT製品です。
原理は簡単、上の写真のように遠隔操作したいスイッチの横にSwitchBotを設置してBluetoothで接続したスマートフォンの専用アプリから指令を出すと、このSwitchBotからアームが出てきてボタンを押してくれます。スイッチを押す機械的な部分は、すごくローテクなのですがそのおかけで、どんなスイッチでも遠隔操作できるようになります。例えば今回紹介したガスファンヒーターの電源スイッチのところに設置すれば、朝起きて布団から出る前にスマートフォンからガスファンヒーターを稼働させて部屋が暖まったら布団から出るなんて使い方もできます。このSwitchBotはAmazonで3,500円程度で購入することができます。
SwitchBotは通常、スマートフォンの専用アプリから動作させるのですが、RaspberryPiで使用できるAPI(Pythonスクリプト)が公開されているので、ラズパイからスイッチのON/OFFを操作することもできます。ラズパイから操作する為に必要なアプリケーションのインストール手順を解説してくれているブログもたくさんあるので、そんなに悩むことなく準備が可能です。
実際、こんな感じでラズパイのコマンドラインからPythonスクリプトを起動してSwitchBotに指令を出すことができます。
但し、SwitchBotをラズパイから操作する為にはBluetoothを使う必要があります。以前、CO2濃度測定の記事で紹介した、CO2濃度センサのMH-Z14AはUART通信を使ってラズパイにデータを送っていますが、Bluetoothoも同じUARTの機能を使用するらしく、同時に使用することができません。
そこで今回はMH-Z14AからUARTではなくPWMの信号を使ってCO2濃度を取得するように変更しました。PWM信号はCO2濃度に応じて信号のハイ時間が変化するので、GPIO端子のハイ時間を測定するプログラムを作って測定したハイ時間からCO2濃度を算出するようにしています。
最後に、CO2濃度に応じて換気扇の風量を切り替えるシステムを使った場合の室内のCO2濃度を紹介させて頂きます。
1つ目のデータは平日、2つ目のデータは休日のデータです。オレンジ色の線が少し高くなっている部分が換気扇の風量を強に設定している期間で、狙い通りCO2濃度が1,000ppmを超えている期間、換気扇の風量を強に設定できています。
作成したシステムは想定通り動作させることができましたが1点微妙なところがあります。それは、SwirchBotが換気扇のスイッチを押せないことがよくあり換気量が切り替わってない場合があることです。
SwitchBotは先ほど紹介した写真のようにスイッチの横のパネルに両面テープで取り付けていますが、SwitchBotがスイッチを押す際にパネルの方が持ち上がってしまい、うまくスイッチを押せない場合があるようなので、この部分は改善が必要です。
まとめ
今回は、ガスファンヒーターのメリット・デメリットとガスファンヒーターを使った場合の室内のCO2濃度の状態について紹介してきました。
暖房能力が高く室内を短い時間で暖めることができるメリットがある反面、室内のCO2濃度が上昇してしまうので定期的に換気する必要があるデメリットもあります。
この為、ガスファンヒーターの使用は短時間にして室内の温度が上昇したらエアコンで温度を維持する使い方が温度的にも環境的にも快適でベストだと思います。
スマートエアーズ(全館空調)とガスファンヒーターの組み合わせと言うと贅沢で光熱費が高くなるのではと思われるかもしれませんが、それぞれの特徴を活かして室内を暖房することで光熱費の上昇も抑えることができると思います。
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