シャッターの断熱性|金属の板で窓の温度が変化するか調べてみた

Raspberry Pi
スポンサーリンク

今回はシャッターの有無が窓の断熱性能に影響するか、窓の温度を測って調べてみた検証記事です。

前回、我が家の壁や床,窓の温度を測って、どの箇所からどれくらいの熱が逃げているか調べた検証記事の中で、窓からの熱損失の割合が意外と小さく、一般的に言われているお家の熱損失の割合とズレていると紹介しました。まだその記事を読んでいないという方はこちらのリンクから前回の記事もチェックしてみて下さい。

トヨタホームは鉄骨造なので窓以外からの熱損失が木造住宅と比較して大きく、相対的に窓からの熱損失の割合が下がっている可能性が高いですが、前回、窓の温度を測定した際にシャッターを閉めていたので、もしかするとシャッターの影響で良い結果になっていた可能性がないか調べてみたいと思います。

ちなみにシャッターの材質は大半がスチール製、塩害などが気になる地域だとアルミやステンレスが使われるそうですが、どの素材にしても断熱性はあまり期待できません。そんな金属のシャッターで窓の温度が変化するのか調べてみたので紹介していきます。

スポンサーリンク

温度測定環境

thermal-insulation-test_09

温度測定環境は前回と同じくRaspberryPiと温度センサ(DS18B20)を使った環境ですが、窓の温度をより正確に測温する為、温度センサの貼り付け方法を少し改善したので紹介させて頂きます。

thermal-insulation-test_15

shutter-insulation_01

1つ目の写真は前回測温した際のセンサの貼り付け方法、2つ目の写真は今回の貼り付け方法です。

shutter-insulation_02

裏側から見るとこんな感じになっていて、温度センサの周囲に発砲スチロールのカバーを被せてみました。前回の測温でも温度センサ自体は測温箇所に直接接触させていましたが、接触させている箇所の反対面は室内の空気と触れていて多少室内温度の影響をうけている可能性があったので、今回は可能な限り室内温度の影響を受けずに窓の温度を正確に測定できるよう室内の空気と温度センサを断熱してみました。

前回の測温では天井の温度は天井付近に溜まった暖かい空気の影響でうまく測定できませんでしたが、今回の測温方法であたらめて天井の測温を実施したところ室内より低い温度が測定できたので天井からの熱損失も計算し前回紹介した我が家の熱損失の記事に反映(リライト)していますので、こちらの記事も確認してみて下さい。

カバーは、家にあった発泡スチロールの箱を適当な大きさに切って溝を掘って作成しました。溝は、はんだゴテを使って掘ると簡単にできますが、はんだゴテを持っている人の方が珍しいと思うので、無い場合はライターで熱した金属を押し当てると簡単に掘れると思います。また周囲の切り口は発砲スチロールがボロボロと崩れるのでテープで補強しています。

shutter-insulation_03

シャッター有無で窓の温度測定結果

それではシャッターを閉めている状態と開けている状態で、窓の温度に変化があったのか結果を紹介していきます。

まず最初のデータはシャッターを閉めている場合の窓の温度です。
測温は前回と同様0時~6時に実施しており、外気温は3℃~5℃の条件です。

shutter-insulation_06

shutter-insulation_07

シャッターを閉めた状態の窓ガラスの温度は室内温度に対して平均で-3.6℃、サッシ部分の温度は平均で-3.0℃との結果でした。

次はシャッターを開けている場合の窓の温度です。

shutter-insulation_04

shutter-insulation_05

シャッターを開けた状態の窓ガラスの温度は室内温度に対して平均で-4.4℃、サッシ部分の温度は平均で-3.7℃との結果となり、シャッターを開けている場合の方が約0.8℃温度が低下しています。

窓の温度が変化する理由

冒頭に記載したようにシャッターは金属製で断熱性は期待できない素材ですが、今回の測温結果では明らかにシャッターを開けていた方が窓の温度が下がっていて熱が多く逃げていることが分かります。

何故シャッターを開けた方が窓の温度が下がるのか、その原因は恐らく風の影響だと思われます。

thermal-insulation-test_11

前回の記事で室内温度Taと壁の温度Twから移動する熱量を計算する際に上図の式を使いました。この図では室内側にTaとTwを書いていますが、屋外側でも同じ式が成立します。
そして熱伝達率hに前回の計算では空気の自然対流の値として1~10W/m²・Kを使いました。自然対流とは壁の近くで冷やされた空気が床の方に下がり自然に空気の流れができる現象のことをいいます。窓から冷気を感じるコールドドラフトと呼ばれる現象も自然対流にあたります。これに対してエアコンやサーキュレーターなどで強制的に空気が流れている状態を強制対流と呼びます。

強制対流の場合、自然対流に比べて熱伝達率hが10倍程度になる為、同じ温度差でも移動する熱量が増加します。同じ室温でも扇風機の風を浴びていると体温がたくさん奪われるのと同じことが窓に対しても起きていると考えられます。

シャッターを開けて測温した日の風速は平均1.7m/s、シャッターを閉めて測温した日の風速は平均1.9m/sとほぼ同じ条件になるので、外気温と風速が同じでもシャッターを閉めることで窓の熱損失が低減し温度が上昇していると考えられます。

シャッターの断熱性能

次に風の影響がどの程度あるか、シャッターにより風を遮ることでどの程度の損失を低減できるのかを数値化してみたいと思います。

トヨタホームの窓ガラスは、メーカーや型式,性能が公表されていませんが、実際の窓ガラスを見るとメーカーのロゴや型番が刻印されており、AGC製のサンバランスセキュリティであることが分かります。

shutter-insulation_10

shutter-insulation_11

品種が分かればAGCのホームページから熱貫流率を確認することができます。我が家の窓ガラスの熱貫流率は上の図に赤枠で示した1.6W/m²・Kになります。

シャッターを閉めた状態で測温した際の室内と屋外の温度差は平均11.6℃だったので、スペック上の単位面積当たりの熱損失は、1.6W/m²・K × 11.6℃ = 18.56W/m² になります。
今度は窓の測温結果から単位面積当たりの熱損失を求めると、5W/m²・K(自然対流空気の熱伝達率) × 3.6℃(室内と窓の温度差) = 18.0W/m² となりスペック上の熱損失とほぼ同じ値なので、今回の測温と計算がある程度信頼できる結果であると考えられます。

次にシャッターを開けた状態での窓の測温結果から単位面積当たりの熱損失を求めると、5W/m²・K(自然対流空気の熱伝達率) × 4.4℃(室内と窓の温度差) = 22.0W/m² となります。
この窓の測温結果から求めた単位面積当たりの熱損失を室内と屋外の温度差で割ると、22W/m² ÷ 11.4℃ = 1.93W/m²・K となりシャッターを開けて1.7m/sの風が窓に当たっている状態の熱貫流率に換算することができます。

僕の住んでいる地域の12月~2月の平均風速を調べてみると1.8m/sで、今回測定した際の風速1.7m/sは平均的な風の状態になります。ということはシャッターが無く風が窓に直接当たってる場合、窓ガラスの断熱性能は仕様上の数値より2割程度低下していて、その分熱損失が増えていることになります。

前回、紹介した我が家の簡易間取りでシャッター有無を比較すると0時~6時の熱損失が0.524kWh増加します。お風呂のお湯160Lを約2.6℃上昇させる熱エネルギー、灯油にすると51.4cc相当の熱量、食品にするとメロンパン1個分くらいの熱量をロスしていることになります。

冬の時期だけの話なので10年間で考えてもロスした暖房費はシャッター1面分くらいにしかならないので費用対効果だけで考えてしまうとメリットはあまりないかもしれません。

また別の日で風速が平均2.0m/sの日にも同様の測温を実施したところ、窓の温度は室内の温度に対して-6.6℃と風速に比例して損失が増えているので、風の強い地域や場所にお家を建てる場合はシャッターによる熱損失の抑制効果が大きくなります。

シャッターのメリット

窓からの熱損失を抑制するという観点では、窓をトリプルガラスにしたり樹脂サッシにする選択肢もあります。シャッターより明確に断熱性能が向上するので熱損失を低減する目的であればこちらの方が良いと思います。ただシャッターにはトリプルガラスや樹脂サッシにはないメリットがあります。

それは日射取得と断熱性を両立できる点です。トリプルガラスや樹脂サッシは断熱性能が向上し家の中の熱は逃げにくくなりますが、同様に外から入ってくる熱を遮断する性能も向上します。

shutter-insulation_08

shutter-insulation_09

このデータはシャッターを開けている状態の昼間の窓の温度です。窓ガラスに設置した温度センサは温度センサ自体が日射取得して窓ガラスの温度以上に暖かくなっている可能性がありますが、窓のサッシ部分に取り付けた温度センサは直接日射が当たらない場所に設置しているにも関わらず室内温度よりプラスになっています。このときの外気温は8℃くらいなので、かなり日光によって窓が暖められていることが分かります。

シャッターであれば晴れている日の昼間は開けることで日射取得し、夜や雨の日は閉めておくことでと断熱性を向上させるという使い方ができます。

ちなみにトヨタホームでは「日射制御エアリーガード」というアイシン製のシャッターを採用することができます。シャッターの板の角度を自由に変えることができ、日射と通気、あとプライバシーをコントロールできる優れものです。スゴくカッコイイのですが、スゴく高いのでの僕は採用しませんでしたが、このような製品を使えば断熱,日射取得,日射遮蔽,通気などをうまく両立することができます。

original-option_10

original-option_09

まとめ

今回はシャッターの断熱性能について紹介してきました。

シャッター自体に断熱性は無いですが、今回の実験で風を遮ることで窓から逃げる熱の量を低減する効果があることが分かりました。

断熱性能だけで費用対効果を考えるとメリットは出ませんが、シャッターには断熱性以外にも色々なメリットがあるので、お家を建てる際にはメリット・デメリットを考えて採用を検討してみてください。

ちなみに過去にシャッターのメリット・デメリットをまとめた記事を書いているので良ければこちらのリンクから断熱性以外のメリットや僕が失敗したなぁと思っていることなども参考にして頂ければと思います。

ちなみに僕のおすすめはシャッターを設置するなら絶対に電動シャッター+一括操作スイッチの組み合わせです。せっかく設置するなら毎日開け閉めしないともったいないです。ただ普段使わない部屋までシャッターの開け閉めをするのは面倒になると思うので、ボタン1つで家中のシャッターを開閉できる電動シャッター+一括操作スイッチが使い勝手がよくて最高の組み合わせだと思います。

冒頭に紹介した温度測定環境の改良について、測定方法を改良して再測定したデータを前回の記事にも反映していますので、こちらの記事もチェックしてみて下さい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました