今回は第1種換気システムと窓開け換気で、どちらが室内の空気をより多く入れ換えできるか、CO2濃度を測定して調べてみたので紹介したいと思います。
以前、我が家のCO2濃度を測定して紹介した記事の中で、寝室のCO2濃度が非常に高くなっていると紹介しました。理由は第1種換気システムが家の中を均一に換気できるよう設計されているのに対して、我が家では家族全員が寝室に集まって寝ていたので、寝室だけが局所的に換気量と人間の呼吸から出るCO2のバランスが崩れCO2濃度が非常に高くなっていました。
換気設備の風量を弱に設定した場合(風量:56m³/h)寝室のCO2濃度は1,900ppm、風量を強に設定した場合(風量:97m³/h)寝室のCO2濃度は1,200ppmでした。
この測定をした時期が冬で、窓を開けての換気を試すことができなかったのですが、窓を開けて寝ていても気持ちの良い季節になり、第1種換気システムで換気した場合と窓を開けて換気した場合で、どちらの方が寝室のCO2濃度を下げることができるか比較してみたので紹介したいと思います。
ハウスメーカーのホームページには「第1種換気で家の中の空気は常にキレイ」のような紹介をされていることが多いですが、実際はどうなのか気になっている方に、普段から経験のある窓開け換気と比較して第1種換気のレベル感を参考にして頂ければと思います。
CO2濃度の測定方法
測定結果の紹介に入る前に、CO2濃度の測定方法と基準値について簡単に紹介しておきます。
測定方法
CO2濃度の測定は、この写真のCO2センサ「MH-Z14A」を使ってRaspberryPiと接続して測定をしています。
RaspberryPiとCO2センサの接続など、測定方法の詳細は別の記事で紹介しているので、気になる方はリンク先の記事も読んでみて下さい。
MH-Z14Aの測定範囲は0~10,000ppm、精度は0~5,000ppmの範囲が±50ppm、5,000~10,000ppmの範囲が±10%と、そこそこ精度があるので再現性のあるデータを測定することができます。
基準値
次にCO2濃度の基準を紹介します。CO2濃度はppmという単位で表されます。ppmは「 Parts per Million」の略で100万分の1になります。パーセント(%)が100分の1なので、1ppm=0.0001%になります。
屋外の空気のCO2濃度は約400ppm、屋内に関しては上の図のように、ビル衛星管理法では1,000ppm以下、学校環境衛生基準では1,500ppm以下と規定されています。
この数値から一般家庭でも概ね1,000ppmを下回っていれば健康な屋内環境と言えると思います。
第1種換気vs窓開け換気
それでは、第1種換気と窓開け換気で寝室のCO2濃度を測定した結果を紹介していきます。
第1種換気システムによる換気
こちらの結果が第1種換気システムの風量を強(風量:97m³/h)で測定した結果です。
トヨタホームの第1種換気システムは1階と2階で設備が分かれていて、1つの設備で97m³/hの風量となっています。そして寝室のある2階の換気システムは寝室と子供部屋×2と階段ホールに給気をしているので、寝室のみで考えた場合の換気量は97m³/h÷4=24.25m³/hとなります。
測定結果のグラフでCO2濃度が急激に上昇している20:30~21:00頃が寝室で就寝した時間になります。就寝前のCO2濃度は、450~500ppm程度、就寝後の0:00頃がCO2濃度のピークで784ppmになります。その後、朝にかけてCO2濃度が低下していき起床直前の7:00頃で671ppmとなっています。
前回測定した時は、換気システムの風量強でもCO2濃度が1,200ppm程度ありましたが、測定の後から家族で部屋を分散して寝るようにしていて、今回の測定では寝室で寝ている人が、僕と長女,長男の3人と前回より人数が減ったためCO2濃度も前回より低い結果となっています。
窓開けによる換気
窓開けによる換気は下の間取図に赤丸で示した2箇所の窓を開けた状態で換気システムを停止して測定しています。
図面下側の引き違い窓は、下の写真のように窓は全開でシャッタを下30cm程度開けた状態としています。開口面積は30cm×60cm=0.18m²程度となっていて、反対側のケースメント(縦滑り出し窓)と同じぐらいの開口面積となるようにしています。
この状態で先ほどと同じように家族3人が寝室で就寝した場合のCO2濃度測定結果が次ぎのグラフとなります。
寝室で就寝した時間は、先ほどと同じ20:30~21:00頃になります。20:30から1:00頃にかけてCO2濃度が上がったり下がったりしていますが、恐らく風の強さによって換気量が変わっている為と推測します。
この測定を実施した日の僕が住んでいる地域の20:00~7:00の風速は0.6m/s~2.5m/sでした。(気象庁データベース調べ)
窓開け換気の場合、CO2濃度のピークは1:00頃の657ppm、起床直前の7:00のCO2濃度は472ppmでした。
第1種換気と窓開け換気のCO2濃度比較
第1種換気 | 窓開け換気 | |
就寝前 (19:00) | 483ppm | 398ppm |
ピーク (0:00~1:00) | 784ppm | 657ppm |
起床前 (7:00) | 671ppm | 472ppm |
今回の測定では、窓開け換気の方が全体的にCO2濃度が100ppm程度低い結果となりました。
窓開けによる換気は外の風速によって換気量が左右されますが、今回の測定では風速1m/s以下の時間帯でも第1種換気よりCO2濃度が低い=部屋の空気の入れ換えができているとの結果でした。
窓開け換気の換気量を計算
次に窓開けによる換気が、どの程度の換気量になっているのか計算によって求めてみたいと思います。
換気量Q[m³/h] = 開口面積A[m²]×風速V[m/s]×60×60 で求めることができます。
窓の開口面積Aは0.18m²、風速Vは1.16m/s(20:00~7:00の平均値)なので
換気量Q[m³/h] = 0.18m²×1.16m/s×60×60 = 752m³/h
となります。
窓に対して垂直方向の風が常に吹いているわけではないので、実際にこれだけの換気量は無いと思いますが、1/3程度の風速で考えても250m³/hと、第1種換気の寝室の換気量24.25m³/hの10倍もあります。
ちなみに風速1m/sは、肌で感じられないほどの微風とのことなのですが、その程度の風でも窓を30cm開けると換気システムより大幅な換気量が得られます。
先ほど紹介した換気量Qを求める式で、開口面積と風速は比例の関係にありました。
トヨタホーム第1種換気システムの給気口はφ150mm程度なので、断面積は0.01772 m²となり、30cm窓を開けた場合の開口面積の1/10程度になります。
つまりトヨタホーム第1種換気システムの給気口φ150mmで、30cm窓開けで風速1m/sの状態と同等の換気量を得ようとした場合、給気口から10m/sの風速で空気を送り込む必要があります。
第1種換気システムの給気口から出ている空気は、音はするものの風はギリギリ感じられる程度の微風なので、30cm窓を開けた状態に対して1/10程度の換気量しなかないもの妥当な数値だと考えられます。
またYKK APのホームページに窓を開けて換気した場合の流体シミュレーション結果が掲載されていて、風速1m/sの条件で、対向する2箇所の窓を開けて換気した場合、換気量は16.6回/hとなっています。法律で決められている24時間換気の換気量0.5回/hの33倍も換気できていることになるので、この情報からも今回の測定結果はある程度妥当な結果だと考えられます。
まとめ
今回は第1種換気システムと窓開け換気で、どちらが室内の空気をより多く入れ換えできるか調べてみた結果を紹介してきました。
実際に部屋のCO2濃度を測定した結果と窓の開口面積×風速から求めた換気量のどちらも、窓開け換気の方が換気量が多いとの結果でした。
もちろん窓を開けての換気は、風が吹いていなければ換気ができませんが、風速1m/s以下であってもトヨタホーム第1種換気システムより多くの空気を入れ替えることができるので、冒頭に記載した「第1種換気で家の中の空気は常にキレイ」との宣伝文句から、第1種換気が窓を開けての換気と同等の気持ち良さを得られると期待してしまうと、実際に住んだ後、期待外れになってしまうと思います。
実際に住んでいて第1種換気システムのみの換気で健康被害や不快感を感じるようなことはありませんが、やはり窓を開けて空気を入れ換えた方が新鮮な空気を感じますし、気持ち良いことは事実なので、その程度のモノだと思ってあまり期待せずに設備を選んでもらった方がよいかと思います。
今回紹介した記事以外にも、換気システムに関する紹介記事を多数書いているのでよかったらリンク先の記事も読んでみて下さい。
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